東京高等裁判所 昭和46年(う)679号 判決 1971年11月17日
主文
本件控訴を棄却する。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人片岡彦六、同村田茂の連名で提出にかかる控訴趣意書に記載されているとおりであるから、ここにこれを引用し、これに対し当裁判所は、事実の取調を行なつたうえ、次のとおり判断する。
控訴趣意第一点について。
所論は、要するに、原判決は、被告人の原判示第一の兇器準備集合の所為と同第二の暴力行為等処罰に関する法律違反の所為を併合罪の関係があるとして、刑法第四五条等を適用して処断している。しかしながら、本件兇器準備集合は、遠山に対し暴行脅迫をするためになされた手段であつて、両者は刑法第五四条第一項により牽連犯として重い暴力行為等処罰に関する法律違反の罪の一罪として処断すべきであるのに、前示のように併合罪として処断した原判決には、判決に影響を及ぼすことの明らかな法令の適用を誤つた違法があるという旨の主張である。
しかし、原判決の認定した事実によれば、被告人は、吉井明ほか一一名と共謀のうえ、第一、遠山利博およびヤクザらしいもの七、八名の生命、身体等に共同して危害を加えることを決意し、昭和四五年五月二六日午後一一時ころから翌二七日午前二時三〇分ころまでの間、原判示遠山方および付近路上ならびに原判示吉井明方において、被告人ほか二名は、〓山三男ほか一名とともに猟銃一丁、同弾薬二〇発位、日本刀二振、包丁二丁、木刀二本位等の兇器を準備し、吉井明ほか六名は、右のとおり兇器が準備されていることを知つて共に集合し、第二、前記第一の日時、場所において、被告人、右吉井明ほか二名は、交交右遠山に対し所携の包丁などを示し、「お前などハンチク野郎は殺してもあきたらねえ、刀がけがれるからこれで指をつめろ、外で若い衆が鉄砲をもつてみな殺しにしてやるといつている」等と怒号し、日本刀を右遠山に向つて振り上げるなどして同人の生命、身体等に危害を加えかねない態度を示して同人を脅迫するとともに、その頭部、顔面等を手拳およびビール瓶ようの瓶で殴打し、さらに同人を足蹴するなどの暴行を加え、西田英二ほか八名らは、右家屋内および付近路上において待機し、もつて数人共同して兇器を示し、かつ、多衆の威力を示して暴行脅迫したというのであつて、かかる事実関係のもとにおいては、被告人の右第一の兇器準備集合の所為と右第二の暴力行為等処罰に関する法律第一条違反の所為とは、併合罪の関係にあると解するのが相当である。(昭和四二年(あ)第二二七七号、同四三年七月一六日最高裁判所第三小法廷決定、刑集二二巻七号八三〇頁参照。)したがつて、原判決には、所論のような法令の適用を誤つた違法はないから、論旨は理由がない。
同第二点について。
所論は、原判決の量刑不当を主張するものである。
しかし、記録を調査して検討するに、本件犯行の動機、罪質、態様および被告人の年令、経歴、暴力事犯に関する前科、生活態度、本件犯行の社会的影響、その他の事情を考慮すれば、所論指摘の被告人にとつて量刑上有利な各般の情状を斟酌しても、被告人を懲役一年二月に処した判決の量刑は相当であると認められるから、論旨は理由がない。
よつて、刑事訴訟法第三九六条により本件控訴を棄却することとして、主文のとおり判決する。